2015-01-01から1年間の記事一覧
2015年12月は、第三週の週末金曜日。クラブの終わった朝六時の六本木の路上、駅への帰り道で、僕は寒風の吹きすさぶ街を静かに歩いていた。気分はもう、「炎のたからもの」のように。 炎のたからもの / ボビー(1979年) 僕は、腹の底に、たった一晩だけで、錆…
人間は線路を走る列車ではない。 列車のようにレールから外れると途端に脱線して事故になることもなければ、ブレーキが効かずに壁にぶつかって粉々になることもない。 我々は、壊れてしまえば元に戻らない最先端機械でもなければ、知能の低い動物でもない。 …
五月三日 午前4時 大阪 某ホテル 僕とS子は、いつまで経っても蒸発しない汗だくの体を、ピタっと寄せ合っていた。ビジネスホテルにありがちな、通気性が最悪なてろてろの安っぽい掛け布団とシーツの中で。 京都から遊びに来たというS子は、隠すべき理由も…
狭いカラオケルームに、男が二人、女が一人。デニムのショートパンツから出たツルツルのナマ足。このツルツルの生足からショートパンツをするっと剥ぎとって、パッと股を開いていこうとするのが今回の我々のナンパの目的である。 オレンジ色のL字のソファに…
タクシーから降り立つ。 新宿歌舞伎町の朝7時。 もはや景色は朝そのものだった。 歌舞伎町は夜の喧騒から排泄された汚物や腐臭で空気はブレードランナーで描かれた世界のように淀んでいた。そこを行き交う飲み帰りの人や、スカウト、ホスト、キャバ嬢、そし…