人間礼賛。〜Pairsで出会ったら、富士急もびっくりの高飛車が来て振り落とされた〜

f:id:OZZ:20160130172159p:plain

 

僕は代官山で一人、知らない女を待っていた。
その女は、Pairsで出会った女だった。
いいねの数150。アプリ的には全くたいした数ではないが、写真はキレイ系でスト値7くらい。
まぁこういうのは、たいてい会ってみるとスト値2くらい下がるから、大した期待もせずに、冬の寒さを堪えていた。
ちなみにいいねの数とスト値はあまり比例しない。
ヘビーユーザー、アカウントつくりたて、課金者ほど上位に行きやすいような、アルゴリズムになってるだけだと僕は推測している。


さて、広告代理店に務めるというその女はいかにも高飛車で、上から目線の、いわゆるキラキラ女子の典型だった。
たまにクラブに行く、男からはよく誘われる、エステ行ってきた、ネイルの写メ…僕にとっては、非常時じゃない非常出口くらい非常にどうでもいいことだらけで、誇大に自分を見せようと言うその自尊心がむしろ、生の葉野菜くらいエグみを帯びていた。
いや、エグすぎてちょっと面倒くさそうだし会いたくねーなくらいだった。
で、お前の中身はどうなん?

ほれほれ、あれだ、PUAたるもの失う覚悟で女の下手に出るな的な、最近で言うマウンティングする的なあれで、僕はそっけなくLINEをたまに返し、そしてたまにマメに返し、なんだかそれが功を奏した。
電話をしたいと言われ、電話嫌いだな〜とリアルな感情を交えて電話をし、盛り上がってきたところで5分で切るという、またもベタな作戦を繰り広げ、ああこんなベタな作戦を冷静にやってるうちは永久に彼女できね〜なちくしょうと独りごちた。
ナンパの経験で溜まった永久不滅ポイントが、カードの返済よりも重く、僕の心の咎になってしまった。


電話そのものをしている感じ、ああ、やっぱりキラキラ系女子ね、という認識に変化はなかった。向こうペースで会話し、かと言って何も面白い話も出ないし、こっちが気を使って相手の気をのせていくアレ。
まぁそこで焦らずヘラヘラもせず、淡々とツッコミを返した。
相手が行きたいカフェがあるというので、昼アポになった。
そのカフェというのが、僕も行きたかったので、別に即にかかわらず楽しんで出かけることにした。
会う前のIOIは明確になった。

前日女子会で朝まで飲んでしまったという女は、そもそも元々2時に待ち合わせしていた時間を3時半でおねがいと指定してきた。
僕は人の時間を奪うことも奪われることも嫌いである。
特段の理由もなく、平気で待ち合わせ時間をかえる人間は信用しない。
もうその時点で僕は、映画AKIRAで、鉄雄が「金田のバイクはどこだよ?」と山形に尋ね、山形がなにも答える前に「どうでもいいや、あんなバイク」という、まさにそんな状態だった。
土曜日も仕事をしていたせいで、大切な日曜日をナンパ脳だけで良かった悪かったと台無しにしたくはなかったので、僕は、お子様は真似しないでください的な暗澹たる気持ちを、さっと切り替え、女を待った。

やってきた女はお姉さん系かとおもいきや、思ったよりカジュアルで、スト値は6になった。
可愛いは可愛いし、確かにモテそうである。
しかし…。

会った瞬間いそいそとまくし立てるように話し始めた女。
緊張して逆にしゃべるタイプか、結構こういうのに慣れているタイプかどっちかなと考えていたが、結局慣れているという結論を下した。

「あたしこう見えて地図読めないから案内して」

自己評価どうなってんだこいつと思いながら、人混みの代官山をカフェまで連れて行く。
歩く間、スマホをめっちゃイジる。
イジりまくる。
ナチュラルに。

ナチュラルに死ねと思いました。

カフェに着いた。

「あ、なんか思ってた雰囲気と違う。お腹すいたからパンケーキ食べたい」

「家で食え」
と心の声をそっと、封じ込めた。

ここまでの展開で、文面だけでは全く僕がイニシアチブを取れていないとおもわれるかもしれないが、イニシアチブをあえて預けている状況、と思っていただきたい。とんでもない妄想かもしれない。

別のカフェに向かう間、女にこう尋ねた。

「いつから彼氏いないの?」

「半年前」

「とは言え恋愛は?」

「うん年収もあってイケメンでいいなと思う人が年末二人くらいいたし一緒に過ごしたりしたんだけどなんか向こうから来なかったんだよね私も私で向こうから来てくれたらオッケーって感じだったけどこう情熱的な気持ちにはなんなくて」

「お前それ、性格ブスやからフラれとんねん」
という言葉を押し殺して、

「まぁタイミングってあるよね」

と無難オブザイヤーを受賞した言の葉を繰り出した。
その後も、私はモテるんだけどいい男がいない。
いい男と会っても…
的なもうほんとその自信過剰っぷりやばいな、核融合的な未来のエネルギーかよと思うレベルで、そして空気的にグッバイすることもできず別のカフェに入った。

ナンパ師としてと言うか、人として戦線離脱して一切の人間的興味を失った僕は、それでも最低限相手に不快感を与えぬよう振る舞った。
30分位でグッバイするまでの苦痛の時間が始まって、恐らくそれを察した女も僕への興味を薄めていった。
まぁスマホを触る、あくびをする、寒いとか言う。
つまんないわたしぃ〜、サインを連発され、こんな大人になってはいけませんよっていう教則ビデオのために動画を撮ろうかと思った程だった。
30分後、僕がおもむろに帰ろっかと言うと彼女も、ウン、といい、駅で別れた。


帰る方向が同じだったのに、わざと違う方向に乗った僕は、結構いい年なんですけど。

これが例えばZoyyさんやロンブーさんやKくんとかなら即れたと思う。なんとなく。
しかし、ひどく反省した。
何を反省したって、貴重な時間をなんとなく一緒にいたくねーなっていう人といてしまったことだった。
なにより向こうにも失礼だし。

時間だけは全ての人間に平等に与えられたものである。だから人生で一番大切なのは時間である。時間だけは大切にしてもらいたい。

今日言いたかったことはそれだけです。

 

 

では、道徳の時間を終わります。

 

 

 

起立!!!