クラブナンパの、X・Y・Z

 

その日もいつものように六本木のV2に入った。エントランスでお金を払うと、奥に続く廊下が紫色をしたフロアへ広がっている。来た、という実感。徐々に溢れ出す音響。またAlexandra Stanがかかっている。僕が入店する時はいつもこの曲に出迎えられているような気がする。俺はMr. Saxobeatではないし、どちらかと言うとMr.Childrenだけど…そんなことはいい、そろそろアレクサンドラ、ニューアルバムの話でもしようぜ。

 

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エントランスでもらったドリンクチケット。僕はそのチケットを財布にしまうとバーカンを横目にフロアまで突き抜けた。既に酔った僕にはお酒はあとでいい。それよりなんだよ、今日もまだ誰もフロアにいないじゃないか。もう1時半だけど?何しにきたの?まぁいいんだ、音楽を聴きながらお酒を飲むのも、踊るのも、ナンパするのも全てが自由だ。好きなように遊べばいい。僕の心は、次に流れる音楽が何か、そんな事に夢中だった。



突然だが勝手な事言う。
近頃、クラブでナンパがめんどくさくなった。厳密に言えば容姿的にいいなと思う子はいるし、そんな彼女たちに選ばれる側の男になったつもりもないが、感覚的にナンパへの気持ちが乗らない、そう言えばいいだろうか。
そういうとごまきさんには(今回もご出演頂いた)、嘘でしょ、勇気がないだけでしょ、逃げでしょ、てかストリートやれよ、って言われる始末の週末をこの前も繰り返してきた。「反応のいい子がいたらすぐ浮かれるくせに」…って、なんでそんなに人の心読めるかなぁ、痛いとこ突かせたらラオウ並みじゃないの? で、まぁその通り。僕は鉄人じゃないし、対人関係で些細な事に一喜一憂する事から、結局は逃げ切れていない。まぁ逃げ切れていない、と言うよりは自分や相手の様々な色をした感情の機微を、全部垂れ流してしまう事をあえて眺めて楽しんでしまっている、と言う事のほうが気分かもしれない。

だってセックス中に考える事ってなんだい?
あ、これで即報告できる。今回は21JD即!だな。遂にテ●ンから崩せたぞ。この子意外にフ●ラがうまいな、でも咥える事しかしない系だな。意外に口臭がするな。背中の毛濃いな。めちゃくちゃ内股が柔らかいな。髪はいい香りだけど、さすがに仕事後の頭皮はあれよね。可愛い下着でしょって僕はピンクのレースなんて可愛いと思ってねーよ? あ、乳首離れ気味。
ひいては狭い、硬い、柔い、エロい、美しい、気持ちいい…ほとんど形容詞!!

け・い・よ・う・し!!!

現実なんてそんなもんじゃない?
そうじゃないセックスもあるよ? もはや形容しがたい果てしない深淵へと頭から落下したかと思うと、毛穴が総立ちして呼吸を始めるような震え、そして元々同じ螺旋のつながりだったかのような一体感。(アレを残さず打ったりはしておりません)
なんだろう、セックスって、相手と話をしつつも、なんだかいい意味で口数が減って、二人の気持ちが、雪が降り始めた時のようにしんとして、目と目があったかと思うと、お互いの瞳の奥に超新星爆発のような輝きを捉えて、そして瞬間、目線が唇に移ったかと思うと、二人の距離が引力で吸い寄せられるようにみるみる縮んで、キスをする、その瞬間がハイライトだと思うんだよね。その吐息が混じり合う瞬間。
Stay the nightで言うAre you gonna stay the night?って歌詞の後の、間の無音と爆発の瞬間ていうか。(まさに歌詞通りじゃないか)
まぁその後もEDMよろしく、ノリノリになるけど、そこはもうスイングバイで飛び出した恋人たちのボイジャーだから。勝手にオールトの雲まで旅して下さいよ。

んな事はどうでもいいよ!!
よくないけどいいよもう。何が言いたかったかって言うとセックスそのものより、水たまりにうっすら滲むアスファルトの油みたいに、虹色の不純物を不純物のまま美しいとか思ってしまうって言う事なんだよね、さっぱりわからないだろ? もう一度だけ説明すると、セックスそのものより、水たまりにうっすら滲むアスファルトの油みたいに、虹色の不純物を不純物のまま美しいとか思ってしまうって言う事なんだよ。大事な事なんで2度言った。

 

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話を戻す。
僕はエントランスを抜けてフロアに出た。そしてクラブですれ違うたくさんの女性を見て何を思っているか、折角だから赤裸々に書こうではないか。
まず目が合う、この子可愛いなと思う、そして服装を見る、クラブによくいるなと思う、性格はどうなんだろう、いいかもしれないし悪いかもしれない、あ、私ってイケてるでしょって顔してるわ、まぁこんな子どこにでもよくいるわな、どこにでもいるならいいや、ナンパめんどくさい、Dear Boyや、踊ろう。
これが一連の流れだ。これが一般的なナンパ師だとするとこうだ。
まず目が合う、この子可愛いなと思うと同時に歩み寄り「やぁ、パーティでも…」
まぁさすがに、どんなオープンしようかとか、服装いじれるかとか観察してるけれど。
こんなのもある。
まず女の子が歩いてくる、セックスできるレベルか見る、できる、腕掴む。
ヒヨコの雄雌判断師みたいだ。酔ったらたまにやるけどね。意外に捕まるよね。でもそんな時はもはや目的は、棒を入れられる穴探しだ、相手の性格も何もほんの数時間いるだけだし、こっちも誤摩化せる。もしかしたらいい子かもしれないよ?しれないけどさ…。
まぁ僕の状態はいわば六本木地蔵学科…じゃなくて声をかけれなくなる地蔵化の流れだ。自己完結で何も行動を起こさず、結局行動からしか良くも悪くも結果など生まれないのに、何もできなくなることの始まりだよ。チキンの始まり、いわばKFCだよ。カーネルサンダースもいつも店前で地蔵してる。

そうして3:30になった。一緒に入った友達はみ〜んなきれいに連れ出しかなんかして見当たらなかった。(探してないけど)
往々にしてナンパのゴールデンタイムとクラブのゴールデンタイムと言うのは重なるもので、僕はただ踊るのが楽しくて楽しくてしょうがなかった。
初めて渋谷のアクシスに行った時はノリ方も、曲も何もわからなかったのに。なんだか踊るのすら恥ずかしくて、隅でじっとしてた時もあった。そして同じ狢の友達とフロアに行って、見よう見まねで前のお兄さんのダンスを踊り、ある時は女の子に教えてもらい、深夜にYoutubeでダンスのビデオを見たり…気が付くと踊る事が恥ずかしい事から、踊らない事が恥ずかしい事になっていた。
クラブっていう非日常が日常になって、クラブ友達が誰もいなかったのに、今は週末にクラブに行けば、いつも友達がいる…。
別にマニアックな音楽に詳しくもないし、音の善し悪しも正直わからないし、言ってみればにわかだけれど、楽しいかどうかは僕自身が決める事だ。
実はここから本題なんだけど、そんな踊りが楽しい絶頂に、フロアで横に女の子がいる。僕はただ楽しくてなんならクラブって言う共有空間で、なんて素晴らしい時間なんだ、っていう気持ちを込めてただ女の子に笑顔を見せる。別に強引な接触も、会話も何もしていない、求めてもいない、一瞬笑顔でそれを伝えるだけ。そうして女の子は、モディリアーニの絵画のようなシラケた白目をむいて、それをスルーする。僕はマグリットの絵画のように顔面に青リンゴをぶつけられたようだ。だれか、ラムとコアントローとレモンジュースを僕に飲ませてください。

真実はいつも人の気持ちを汲んで、優しく答えてくれる訳はない。どちらかと言うと我々は生き残るためにあらゆる事を欺くとこで、進化し、子孫を残せてきた。欺き、裏をかけるものは、真実をそのまま扱うものより、一つ裏側にいる事によってその知恵で勝ち残ってきた。ありのままをありのままで受け入れられる人間が、果たして世の中に、クラブにどれほどいるか。それができれば余裕とも取れるし、バカとも言えるし、賢者かもしれないし、運命かもしれない。
人の裏をかいたり、コントロールするにはその相手より1.5倍とか2倍のエナジーがいる。相手がエナジーが強ければそれだけこちらもエナジーが必要だ。相手の得意としてるクリティカルなエナジーだけ制すればいい事もあるし、総合的に平均より上を出し続けないといけないこともある。
クラブにおいて、素直にありのままに、誠実さや真面目さを語っても仕方ないんだよ、だって誰もあの場でそんな理性的高等人格は求めちゃいない。それよりもっと男としてのエナジーだ。あんな空間だからこそ誰もが数時間なら誤摩化せる可能性があるじゃない。男から見てもこの男は魅力的だ、なんてこと。猿山のボス猿がわかりやすい。

と、まぁこんなことにはエナジーがいるから、最近クラブでナンパする気がしないってこと。元々の自分の気質から四速くらいまでシフトチェンジしないといけないからかもしれないし、その方法を身体化する以前に失速したからかもしれないけど。

言い訳はすなわち恐怖であり、それは私を守り、同時に制約し続ける寄生虫のようなもの。