【潜入】PUA_akiさんのナンパスクール 〜うっすら濡れた夜〜

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※1

 

しとしとと降る雨、つやつや光る夜のネオン。
昭和の日のとある繁華街。

傘もささずに歩くakiさんと講習生と僕。もうスクール(講習)が始まって45分ほど経ったろうか、フル回転の僕の頭が、akiさんの発する言葉や仕草から、一つのメッセージも逃すまいと集中力を全開にしている時だった。
ふとakiさんが言った。

「今言ったこと、ちょっとやってみるので僕のナンパを見てみて下さい」

そう告げると、斜め前を歩いていたロングヘアーのJJ系の女の子に、akiさんがさっと歩いて行く。女の子は綺麗だ。
僕なら無理だと思って声を掛けない雰囲気の女の子。とぼとぼ歩いているわけでも、服装にちぐはぐした要素があるわけでもない。即系ではない。
akiさんには悪いが、正直、僕はこころの中でこう思った。
あれはオープンしないでしょ、ガンシカでしょ。

akiさんは僕らから離れると、すっと女の子の横に並んだ。
確かに見えた。
独自のリズムと空気をまとったakiさんと、その女の子の、日常の空気が混ざり合ったのが。
それは水と油ではなく、水とウォッカのようだった。
一見無色透明で何も変わらないのに、知らず知らずのうちに刺激が紛れ込んで、異世界へといざなう。
そんな風に。
akiさんが何か話しかけて、女の子に小さなジェスチャーをした。

 

 

・・・僕は鳥肌が立った。

 


わずか接触から3秒。笑顔に変わった女の子は、もうakiさんの世界に取り込まれていた。




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ポツポツと頬に落ちだした雨粒。どうやら雨の予報は当たったようだった。

ひょんなことから、akiさんのナンパスクールに観察者としてお邪魔することになった。
この日はClass0という初学者向けのもの。無料で約1時間。

僕はakiさんと少し早めに合流して、話した。会って速攻投げ込まれる、嘘かホントかわからない僕へのネグに、恥ずかしながら戸惑ってしまった。

そうして講習生と落ち合った。街を歩きながら講習生の人となりや、経験などを聞き出して参考にしつつ、基本的なマインドセットやakiさんのナンパでのフレーム(論理や捉え方の枠組みのようなもの)についてざっくりと説明が入る。
むしろほとんどの時間をここに費やしていた。勿論講習生によって内容やなんかは少しづつ変わるという。

スポーツでも勉強でもそうだけれど、いきなり闇雲に始めることはできるし、ある程度結果は出るけれど、より効率と効果を求めるのであれば、理論や仕組みを理解することは必要。むしろ近道というわけだ。正直これが無料かと思った。
逆に言えばほぼナンパ未経験の人がこれを受けて、どこまで理解できるのだろうか、という気持ちになった。
いや、概ね理解というのは出来るかもしれない。
むしろ体感出来るか?体現できるか?ということにあったかもしれない。

あらゆるものにはリテラシーが付きまとう。(ここでいうリテラシーとは「情報がある形で提示されるに至った経緯や、発信者が隠そうとしている意図や目的まで批判的に見抜く能力」を指す)そしてそのリテラシーを得るにはある程度の「経験や感受性」がいる。
今回のakiさんのナンパ講習で言えば、初学者向けとはいえ、かなり突っ込んだ所まで説明している。しかし初学者がそれらを小一時間で体感はなかなかできないだろうとは思う。理解と体感は違う。更には体感と体現も。勿論すぐには分からなくてもいいと思う。
むしろ、言われたことをずっと心の中に留めておくことで、あるいはナンパを続けていくうちに、点と点が線でつながる体験をするのかもしれない、と思った。

まぁ僕自身たいした腕はないし、理論もヘチマもないようにナンパをしてきたが、あらためてakiさんが講習生に丁寧に言っていることが、僕には逆に究極の復習として耳に入ってきたのだった。

そんなことをグルグル考えながら歩いていると(恐らく僕は考えすぎて般若みたいな険しい顔をしていたと思う)大通りで、ふとakiさんが言った。

「今言ったこと、ちょっとやってみるので僕のナンパを見てみて下さい」

このakiさんのナンパこそが、僕にとってこの講習のハイライトだった。(いつの間にか僕の講習みたいになってるやんとか置いといて)
もちろんakiさんとはたまにあって話したりするが、ここまで真剣に集中して彼のナンパを見た事がなかった。

一瞬の出来事の後、思った。

めちゃくちゃナンパうめぇ。
(正確には声掛けから軽い和みまで)

声は聞こえなくてもそれは十分に分かった。

僕は思った。




・・・この講習では、これを絶対に見逃してはならない。そして感じなければならないな、と。

 

 

 

気が付くと僕らの周りの人々は傘をさしていた。そして僕の髪もジャケットも霧雨でしっとり濡れていた。
スクールが終わった。

 


同行を許して頂いたakiさん、ならびに講習生の方、有難うございました。

 

 

 

 


※1…このポスターはアキ・カウリスマキ監督の映画「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ